犯罪被害者に寄り添い支える 公益社団法人 全国被害者支援ネットワーク

全国被害者支援ネットワークは、全国48の加盟団体と連携・協力しながら
犯罪被害に遭われた方々へ支援活動を行なっています。

犯罪被害者の声 SNSによる子供を狙う犯罪の怖さ

SNSによる子供を狙う犯罪の怖さ

公益社団法人犯罪被害者支援センター
匿 名 
「犯罪被害者の声 第14集より」

思い起こせば、あの痛ましい事件からそろそろ一年が経とうとしています。
 今でもあの日の事はまだ鮮明に思い出されます。
 妻より「娘が帰宅時間を過ぎても帰ってこないからタブレットを見たらよくわからない男に呼び出され連れて行かれてるようだ」という電話が今回の事件を知る事となる最初でした。
 その電話が来たのは帰宅途中でした。急いで帰宅し妻に状況を聞くと「SNSで誰かと連絡を取り合い出かけて行ったようだ。相手のアカウントは分かったから、“帰宅させるように。帰宅時間までに返さないのであれば、警察に通報する。”とメッセージを送ったが一向に返事がないから、警察に通報した」との事でした。
 その後警察が自宅に来て、さらに詳細を妻から聞きました。
 1 年ぐらい前から娘がSNSにてメッセージをやり取りしていて半年ぐらい前にそれに気付き、相手に対しメッセージを送ってこないように連絡した上で、娘のアカウント閉鎖・履歴の削除をしたとの事でした。
 その当時に妻より話を聞いていれば私も何か対処していたのかもしれませんが、その時、妻は一人で抱え込み対処していました。
 その後、別のSNSにて最近また、メッセージのやり取りをしていたみたいで、相手より「会いたいから迎えに行く」とのメッセージで娘は連れて行かれたようです。
 その日の深夜、娘は一人で帰ってきました。というより自宅付近のただならぬ気配で自宅内に入る事が出来ず、庭先に隠れていたのを発見したという状況でした。娘が帰ってきてくれて安堵しておりましたが、娘は無傷ではなく、犯人に弄ばれてしまっていました。
 娘の帰宅後、娘と妻は警察・病院と慌ただしくしておりました。私の方は娘の帰宅でただただ呆然としておりました。
 翌日、警察より犯人の確保の連絡がありました。そして、支援センターへの相談を勧められました。
 当然の事ながら、今まで犯罪に巻き込まれる事もなく平穏に暮らしていた私達が、「今後どうしたら良いのか?」「何をすべきなのか?」「娘のケアは?」などなど周囲に教えてくれる相手もなく、また聞くことも出来ず誰にも相談できず、藁にも縋る気持ちで支援センターに連絡しました。
 支援員の方々に「娘のケア」「警察・検察への対応」「犯人に対しどうしたらよいのか」などなど私が聞きたい事、思っている事すべて相談させて頂き、親身になって頂いた回答を得ることができ、とても頼りになりました。

 その後、裁判も進み結審しましたが、裁判中の犯人の言動を見ているととても反省しているようには思えず悔しい気持ちだけが残りました。
 そろそろ事件より1 年が経とうとしております。未だに犯人・犯人関係者より謝罪は一切ありません。また、こちらの被った被害に対する賠償も一切ありません。
 私は、犯人を一生許すことはないのだと思います。が、謝罪・賠償があり始めてこの事件に対し一つの区切りが出来るのではと思います。

 ちょうどこの寄稿に関し説明を受ける時に「犯人の現状って確認できないのですか?」と質問した所、確認して頂けとんでもない事実が発覚しました。
 同様の別件で他県でもう一度逮捕されていると。現在裁判中だと。
 世間一般では、性犯罪は再犯等が多いと聞きます。やっぱりそうだったのかという思いと共に、今回の件でこれ以上の被害者が出ないように食い止められたという思いがあり、とても複雑な心境になりました。

 今回の件では、私も妻も知らない所で娘がSNSにてメッセージをやり取りし、誘い出されたという事が全ての始まりでした。
 フィルタリング・接続制限等の対応が親として甘かったといわれてしまえば何も反論できません。が、犯罪を犯すものにとってはあらゆる手段を用い掻い潜ろうとするものだと思います。また、一度成功すると同じ方法を用い同じ過ちを繰り返すものだと思います。そして、事が起きるまでそのような状態になっていることを私達は知る術もありません。逆に、子供にあらゆる接続ツールの使用禁止なんてことも出来ません。最初はただゲームをし、ゲーム上でのチャットからSNSに移りやり取りをしていく。それを察知し防いでいく事はなかなか難しいことだと思いますし、現に私達は防ぐことが出来ず娘を守れませんでした。守る為には、そもそも何もやらせなければ良かったという結論になってしまいます。
 SNSに関しては、私達のような被害に巻き込まれる以外にも、誹謗中傷等で心を病んでしまう方もいるなど大きな社会問題だと思っています。
 私達一個人では何も変えられないのかもしれませんが、SNS自体が匿名性があるのが一番の原因ではないでしょうか。色々な所で議論等されているようですが、一向に改善される兆しはありません。私達と同様の事案が毎日のようにニュース等で流れると、なぜ未だに変わらないのだろうと、なぜ変えてくれないのだろうと思います。
 今回、支援センターの方々には、心のケア・精神的な面で色々助けて頂いて感謝しております。ただ、被害者としては裁判等の金銭的な負担・賠償金等の受け取りに関し、まだまだ改善して頂けたらと思います。私達の事案では、犯人が別件での事がある為、このまま金銭的には泣き寝入りするしかなくなってしまいそうです。この点を補助なり、代行なりしてもらえるような事があると、被害者が苦しめられ続けることが軽減されるのではないかと思います。

 最後になりますが、皆さんが娘のような被害にあわない為にも子供のSNS等の使用には十分気を付け、また、安心して使用できるような制度・改革が行われます様に願います。