犯罪被害者に寄り添い支える 公益社団法人 全国被害者支援ネットワーク

全国被害者支援ネットワークは、全国48の加盟団体と連携・協力しながら
犯罪被害に遭われた方々へ支援活動を行なっています。

犯罪被害者の声 事件から九年

事件から九年

公益社団法人みやぎ被害者支援センター
自助グループ「やすらぎ」
匿名
「犯罪被害者の声第10集より」

突然娘を亡くした私達家族が、社会的、精神的にも、傷つけられ、ただただ押し流された八年目の秋が来ました。
あの事件以来、毎日どう過して来たかは、記憶が定かではなく、娘を亡くしたその日は絶対に忘れることが出来ません。
事件の前夜、娘の友達が遊びに来て笑い声が響いて楽しそうでした。
相手は一週間前に別れたのに、諦めきれず復縁を迫り、一日中自宅の周りをうろついていたのを近所の人が目撃しています。
そして事件の日、安心出来る家の中で、殺害されたのです。
恐らく娘は恐怖で声を出せないまま苦しんで亡くなったと思います。

気づいてやれなかった事が、悔んでも悔みきれません。誰が予想できるでしょうか、前の夜まで元気だった娘が朝に亡くなったなんて、何が起きたのか分からず慌てて娘の部屋に行ったら、そこで見た光景は、動かない娘の姿で夫は娘の名前を呼び、頬を叩き「起きろ起きろ」と体を揺すり続けました。

私は夢だ!!夢を見ているのだと自分に言い聞かせながらも全身の震えが止まらずひたすら娘の名前を呼び続けました。娘がなぜ死んだのか分からず呆然として、側から離れる事が出来ませんでした。
加害者は、逃げようとしたのか、自殺しようとしたのか分かりませんが二日後に亡くなりました。今まで他人事としか思っていなかったのに、こんな田舎町で事件が起きるなんて誰が想像出来るでしょうか。
自宅の周りに報道取材記者が押し寄せ、ヘリコプターが飛び回りカメラに映され、何も悪い事をしていないのに、被害者家族を傷つけるのかと怒りが込み上げて来ました。相手に対しても絶対許す事は出来ません。生きていれば同じように殺してやりたい、二十二年間苦労して大事に育てた娘を一瞬にして殺された、私達のやるせなさ、悔しいこの思い、腸が煮えくり返る程憎くてたまりません。何年が過ぎても、私達はこの苦しみから癒える事はないのです。

時間が戻れるなら、あの日の夜に戻りたい。そして娘を守り助けてあげたかった。
何度も夢であって欲しいと願った日々、娘は誰からも好かれる気持ちの優しい子で、私達の宝でした。九年が過ぎた今でも、娘を思い出さない日はありません。友達や同級生を見かけるたび、今頃は結婚して子供もいたのかなあと思い浮かべます。

私達だけでなく同じ経験をした被害者家族も一緒だと思います。
事件後私は仕事ができず、脱力感と記憶力がなくなり、うつ病状態で誰とも会いたくも、話したくもない、辛い日々でした。
周りで娘の事、事件の内容を根掘り葉掘り聞く無神経な人もいました。何気ない会話も敏感になり傷つき、勝手に涙が出てとても辛かったです。自分が被害者になった事で何も言わないで欲しい、そっとして欲しい、経験した事のない人には分からない事だと実感しました。
反面、ここまで来れたのも数々の人達に、支えられ、温かく見守られ、優しく励ましてもらい過して来れたことを感謝しています。

一昨年嬉しい事がありました。
亡くなる前に、娘から私の誕生日にプレゼントされた鉢植えの花が七年目にして突然咲いたのです。貰った時は小さく一つしか咲いていなかった花が、葉も大きくなり二つ咲いたのです。ピンク色の可憐な花で「娘によく似ているね」とお客さんに言われました。
七年間咲かなかったのに、今頃何故?
娘は、「お母さん安心して、もう私は大丈夫」と言っているようで、涙が止まりませんでした。

鉢植えは仕事先の窓際で私を見守ってくれています。これから少しずつ前向きに生きて行こうと思います。このような悲しくて、辛い事件が二度と起きないように、毎日が平和でありますようにと願っています。