犯罪被害者に寄り添い支える 公益社団法人 全国被害者支援ネットワーク

全国被害者支援ネットワークは、全国48の加盟団体と連携・協力しながら
犯罪被害に遭われた方々へ支援活動を行なっています。

犯罪被害者の声 赤信号で飛び出したあなたへ

赤信号で飛び出したあなたへ

認定NPO 法人おうみ犯罪被害者支援センター
匿名
「犯罪被害者の声第11集より」 

平成27年10月8日 帰宅途中のK さんが運転する車は、赤信号を無視して出てきた相手の車に激しく衝突し、車は大破し、Kさんは意識不明の重体となりました。
ご家族の懸命な祈りの中、一度も目を覚まさないままに翌年の6月9日に亡くなられました。
K さんの妻は「今はもう…何も考えられない…」と言われていましたが、毎回かかさずにしっかりと裁判を傍聴されて、「何も言えずに亡くなった夫のために私が出来ることは…」と、被害者意見陳述でその思いを述べられました。これはその時の意見陳述書です。

『赤信号で飛び出したあなたへ』

結婚して32年。まじめで、とてもやさしい人でした。
あの日の朝も、いつもの様に元気に出勤し、夕方には帰宅するはずだったのに、突然の事故で、帰って来てはくれませんでした。
あなたの大切な人がいつもの様に出掛け、それきり帰ってこず、話すことも立つこともできない状態になってしまう。そんなことが想像できますか?
長年、遊びらしいこともせず、ただひたすらに、家族を養うために必死で働いてくれました。その会社も、あと2年で定年退職の予定でした。
私たち夫婦はいつも2人一緒でした。御飯を食べるのも、テレビを観るのも。私は何でも主人に話しました。仕事の話、ゆうべみた怖い夢の話も。
何でも「うん、うん」とやさしく聞いてくれました。
娘夫婦に待望の初孫が産まれ、とっても喜んでいました。孫をだっこして歩くのが大好きでした。孫をだいて、うれしいけれど少し恥ずかしそうに近所を歩いていた姿を思い出します。もっと、もっと孫をだっこしたかったでしょう。孫と一緒にいろんな所へ遊びに出かけたかったことでしょう。今、孫は主人の写真を見て、「じいじ」と言える様になりました。そのかわいい声を聞かせてあげたかった。
その成長を、一緒に、見守ってゆきたかった。
孫との楽しい時間を一緒に過ごしたかった。
事故の後、娘の2 人目妊娠がわかりました。主人は何も知りません。
昨年の6 月、娘の2 人目出産を待っていたかの様に、その1週間後に逝ってしまいました。
息子たちの将来のこともとても心配していました。全てが心残りだったでしょう。
事故の後、2か月程たった頃、私や家族が話しかけると、顔をくしゃくしゃにして泣いたことがありました。人工呼吸器のせいで、声も出せずに泣きじゃくる愛する人の姿を見るつらさがあなたにはわかりますか?
私は、主人はあなたに殺されてしまったと思っています。
毎日、毎日、泣き続けても涙はかれません。
不安で、胸がドキドキして、動悸が止まらまくなり、気が狂いそうになる程のさみしさを感じたことがありますか?
あまりの苦しさに、死んでしまいたい!と、何度も思いましたが、事故の後に子どもたちが泣いた姿を思い出し、これ以上、子どもたちを悲しませたくないと、必死でこらえて、思いとどまることができました。
今でも、涙が止まらなくなるほど、苦しくなってどうしたらいいかわからない程、取り乱してしまう時があります。
  もっともっと話したかった。
つまらないことを言って笑い合いたかった。
あんなに元気だったのに。
おじいさん、おばあさんになるまで、ずっと一緒に楽しくくらしたかった。
あなたが赤信号で飛び出したことで、私たち家族の人生は、めちゃくちゃです。
幸せを返してください。
私の大切な人を返してください。
最後に、裁判官にお願いがあります。もう二度とこんな事故が起こらない様、私たちの様に悲しむ人を作らないために、自らの罪を反省してもらうべく、充分な罰を与えていただきたく思います。
最後になりましたが、こうして意見陳述の時間を作ってくださった皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。
平成29年1 月16日