犯罪被害者に寄り添い支える 公益社団法人 全国被害者支援ネットワーク

全国被害者支援ネットワークは、全国48の加盟団体と連携・協力しながら
犯罪被害に遭われた方々へ支援活動を行なっています。

犯罪被害者の声 「極悪人に厳罰を望みます」~ 2 年前の意見陳述から~

「極悪人に厳罰を望みます」~ 2 年前の意見陳述から~

公益社団法人おうみ犯罪被害者支援センター
匿 名
「犯罪被害者の声 第19集より」

Bさんは高校生から9 年間、Tに騙され、脅され、性被害と詐欺被害に苦しみ続けました。Tは架空の危険人物を複数でっち上げ、その人物になりすましてBさんを脅し、自分が解決してやるからそれには費用がかかるとか、性的な動画が必要だと言葉巧みにBさんをコントロールし続けました。当時の意見陳述の一部を紹介します。

青春を台なしにされた
Tは極悪人です。私の罪悪感、性被害を恥じる気持ち、その行為を親や学校に知られたくないという恐怖を徹底的に利用して、私の青春を台なしにしました。
Tが私を騙した方法は卑劣極まりないものです。
自分が脅しているのではなく、第三者を作り出し、私が直接Tに不満や不安をぶつけられないようにしました。むしろ、T自身も第三者から脅されている被害者だと思い込ませ、私に「Tに申し訳ないことをしている」という強い罪悪感を植え付けました。
Tは私が返事するまで昼夜を問わず、LINEやメールを延々と送り続けてきます。それが分かっているので、私はすぐに返事をするようになり、それはTの思う壺でした。
私が要求を断ると、私にしたのと同じ要求を友達にしました。「Bもやっているからお前もやらないか」ともちかけたのです。友達は「本当にそんなことをしているの」と聞き、私を心配してくれました。でも、警察に相談したら未成年なので親に連絡がいく、親から学校に連絡がいく、学校にばれたら停学になると思って、必死に否定しました。
もちろん、Tが私に強いている性行為を友達に知られるのは死んでも嫌でした。
このできごとは、私に大きな影響を与えました。「そんなことは起きないだろう」というようなことも、一度でも実行されると「実際に起きる」と刷り込まれて、恐怖となってしまいます。Tはそれを見越して、私のコントロールに成功しました。
お金や動画撮影の要求にすぐに応えられないと、要求がエスカレートするため、スマホが手放せなくなりました。夜寝てしまうと返信できないので、寝るのさえ怖くなりました。
今度は眠れなくなる恐怖から逃れるため、自分が外出できないときや連絡できないとき、予めTに伝えるようになりました。Tは私のスケジュールを掌握して、命令しやすくなりました。授業を抜け出して、人のいない所を探し、嫌でたまらない性行為の動画を撮ること自体への罪悪感は常に私を苦しめました。さらに、友達に嘘をつくたびに嘘つきの自分が嫌で苦しくてたまりませんでした。
Tは私から徹底的にお金を巻き上げました。お金が準備できないと「あいつから借りたらどうだ」と友達を指定してきました。Tは私の借金返済の状況を聞きだし、あとどれくらい私が借金できるか、常に計算していたのです。
こんなことを何年も続けていると、他人に性行為がばれるのではないかという恐怖、画像が出まわっている不安、お金がない苦しさ、借金を頼む苦しさ、誰にも相談できない孤独などですべてに臆病になって、自分で現状を変えようとする意欲を全くもてなくなりました。
Tに性行為を強要されたときも、「なぜ、どうして」と尋ねても「次こそうまくいくから」と言われ続けたので、断らなければ解決できる。
言いなりになることがそのまま自分で解決できることだと無理やりに自分に思い込ませるようになりました。

Tが与えた深い傷
私には一生、消えない傷ができました。Tが私に強いた性行為は、私の尊厳を徹底的に破壊しました。10代の私は、「自分が汚れた人間になってしまった」という思いに打ちのめされていました。今でもその意識を拭い去ることができずにいます。
その行為の間、何も考えないようにしてやり過ごしたので、感情が凍ったままだと感じることがあります。あれから、一度も心の底から笑ったり楽しんだりできなくなった自分がいます。当時は、何度も死にたいと思いました。でも、私がどんなに辛い状況でも死ななかったのは、死んだらすべてバレて、親に迷惑がかかってしまうと思ったからです。また、私が死んでしまったら、Tに迷惑がかかると思っていました。
もちろん、借金は私に重くのしかかっています。Tが浪費したお金なのに、どうしてTではなく、私が働いて返しているのでしょうか。
債務整理をしたほうがいいと頭ではわかっています。でも、その決心がどうしてもつきません。Tに言葉巧みに騙され、あちこちで借金をしてお金を工面する生活を続けたために、借金をする恐怖よりも、借金ができない恐怖のほうが大きくなってしまいました。
また、人を信頼できなくなりました。クラスメートがこんなひどい目に私を合わせたのです。そんなことをされる理由が全く分からない私は、ごく身近にいる人は信用できないということが骨の髄までしみました。Tに騙されていたと分かったときから、私は他人を信用できなくなったばかりか、自分の人を見る目にも全く自信がなくなりました。いくら考えても自分が被害にあった理由が分からないので、何が正しいのか一人では判断することができなくなってしまいました。
Tは言葉でも私を何度も深く傷つけました。「キャバクラで働けば」とふざけたスタンプをつけてLINEで言ってきたことは、絶対に忘れることはできません。
なぜ、騙されていると気づかなかったのか、と言われれば、私の答はこうです。騙されているという疑惑は、Tへの疑惑と同じです。でも、そもそも、Tに騙される理由がない私は、これが騙しとは一切思いもしませんでした。私は、何の落ち度もない同級生をこんなひどい目に合わせることができる、Tのような人間がこの世に存在することを知らなかった。世の中にこんな悪人がいると少しでも多くの人に知ってほしい。Tに厳罰を望みます。


─変えられない過去─
Tに懲役5 年の判決が出て1 年半。今のBさんの心境を寄稿していただきました。

ぐるぐると考える日々
私が、被害にあったのは何年も前になります。日々辛かった事や思い出したくない事を少しずつ考えない生活をおくれるようになりましたが、ふとした時や何か考えていないと、今もその時のことを思い出し、どうして騙されてしまったのだろう、もっと違った対応が取れなかったか、あのときこうしていれば、被害に遭うことはなかったのに、、、とぐるぐると考えてしまいます。被害にあっていた当時、相談できる相手がいませんでした。
そして、騙されて困っていても誰にも話せず、何年も経ち、学生から社会人となり、一人暮らしの中で金銭的に生活していけなくなってどうしようもできなくなった時に、お金を貸してもらうため、彼氏に事情を話す必要があり、そこで初めて第三者に話しました。そして、「騙されているよ」と言われ、最初は全く理解できませんでしたが、被害に気づくきっかけになりました。
その後、警察署に行き相談し、支援センターの方と話していく中で、私は悪くなく、騙していた相手の自己満足のせいで、被害にあったということを理解できました。そして同時にどうして私が、被害に遭わなければいけなかったのだろう、と何も考えられなかった私に気持ちが戻ってきました。生きることに精一杯で、自分の気持ちがなかった頃に比べたら、気持ちが戻ったことは良かったのですが、逆に苦しくなることも増えました。

消えない苦しみ
騙されているときは、悪い相手と関わってしまったばっかりに巻き込んでしまって、一緒に苦悩している友人がいるから、私だけが不幸だと思ってはいけないと思っていました。しかし、実は一緒に苦労していると思っていた相手が、私のことを騙していた本人だと自分が理解したときに、騙していた相手のことを本当に許せない気持ちと、いくら法律によって罰せされたとしても変えられない事実に、絶望しました。
裁判の最中も自分のことしか考えておらず、嘘も平気でつく相手が、刑務所でいくら罰を受けても、更生するとは思えないですし、正直一生刑務所からは出てきてほしくありません。しかし刑期は決まっており、あと数年で出てきます。嫌でたまりません。被害にあった私からすると、今後同じ世界で生きていきたくないです。相手が死んだとしても許せません。違う世界で一生苦しんで苦労して生き続けて欲しいです。
相談できる相手や支援センターなどもあると知った今は同じ様に1人で悩み、騙されることはないと思います。しかし、騙され搾取された過去は変えられなく、苦しみも消えることはありません。


「耐え抜いた証人尋問」 OVSC 支援担当 M・Y
令和2 年12月、警察署から支援をしてほしい被害者がいる、と言われて話を聞きに行ったのはとても寒い日で、赤々と石油ストーブの火が燃えていたことが印象に残っています。初めて担当刑事から事件の詳細を聞いたのですが、にわかには信じられない複雑な内容で、さっぱり理解できずに帰ってきました。
その後、Bさんと会って何度も何度も話を伺い、Tの奸智に長けた騙しの手口、冷酷で狡猾な人間性が徐々に分かってきました。
Bさんは想像もできない苦しみのなかで、我慢強く公判に向き合いました。Tが否認していたため、長時間にわたる証人尋問に挑まなければならなくなりました。Bさんの人権をないがしろにし、繰り返し傷つける尋問にもよく耐え抜いてくれました。膝の上に握りしめたハンカチが怒りのあまり、ずっとブルブル震えていたのを昨日のことのように思い出します。結果は有罪でしたが、Tの否認と相手弁護士の方針で、期間内整理手続きに長期間を有し、判決のときには民事の公訴時効にかかってしまいました。
今回、今も消えない苦しみや憎しみとたたかっている被害者への理解の一助になればと、無理を言って、寄稿していただきました。この場を借りてBさんに厚く御礼申し上げます。