弟をなくし、犯罪被害者になって
公益社団法人福井被害者支援センター
M・A
「犯罪被害者の声 第19集より」
五年前にたった一人の弟を殺されました。
それは余りにも突然で、そんな事が私達家族に起ころうとは、考えてもいませんでした。
最後に会ったのは死の三日前で、家で見たその弟の姿が最後になるなんて、想像もしていませんでした。仕事で家に帰るのが、少しでも遅れそうだと必ず連絡してくる弟。いつもの時間になっても帰らず連絡もつかず、こんな事は初めてで、何かあったのかと不安になりました。
そして次の日、変わり果てた姿で弟の遺体が発見され、現実を受け止められず、今起こっている事が信じられませんでした。
当時、警察署の遺体安置所で弟の本人確認をした父を思うと、胸が張り裂ける思いです。
数日後、自首をして逮捕された犯人は、以前も罪を犯し逮捕歴がある、弟と同じ職場の同僚だった人物で、まさかという思いでした。
裁判を通して明らかになったのは、加害者が何年も前から投資といって弟をだまし、お金を借り続けていた事でした。
加害者は、何のためらいもなく平気で嘘をつき、他人を利用する人間であり、常に金銭にまつわる問題で、周囲に迷惑をかけ続けていて、勤務先での横領やギャンブルなどで借金をして、親に返済してもらう事を何度も繰り返し、それでも借金が無くならず、その返済に追われる日々で家庭を持っても、その現状を一向に改善する事もなく、無責任で計画性のない生活態度であった事が分かりました。
裁判での加害者は、罪を少しでも軽くしようとするような言い訳ばかりで、心の底から謝罪をしているようには見えませんでした。
私は、あなたの心に少しでも響いてくれたらと、後悔と反省の気持ちが少しでも芽生えてくれたらという思いで意見陳述を行いました。
判決は無期懲役。死刑になる事を望んではいましたが、おそらく無理だろうという思いもありました。残念でなりません。
怖くて、苦しくて、痛い思いをしながら命を奪われた弟は、まだまだやりたい事が沢山あったはずです。それも出来ず、話す事も、笑う事も、泣く事も、悩む事も出来ないですし、生きたかったのに生きられなかった、弟が受けた恐怖や無念さは計り知れません。
しかし、加害者は法に守られ命を奪われる事もなく、塀の中とはいえ、これからも毎日の生活に困る事もない、死ぬまで衣食住を保証され生きていく事が出来ると思うと、あまりにも理不尽すぎます。
ただ一方で死んでしまったら、本人は自分の犯した罪と向き合い贖罪に努める事も反省する事もなく、それで終わってしまいます。
弟を苦しめ、私達遺族を苦しめた加害者には、刑務所の中で逃げ出したくなるほど辛く苦しい思いをしながら、反省と後悔の日々を過ごさせ、一生自由の無い生活をさせる方がいいのではないかという思いもあります。
あの日以来、私達の生活は一変しました。事件から五年、判決が出てから二年半が経ちますが、ずっと苦しく辛い毎日。何をしていても事件の事が頭から離れませんし、考えない日はないです。父も未だに立ち直る事が出来ず、涙を流さない日はありません。
今回の事は、加害者家族自身が起こした事件ではなく、そういう意味では被害者とも言えるのかもしれません。ただ事件に直接関与していなかったとしても、加害者の親としての責任はあると思っていますし、被害者遺族に謝罪するのは当然だと思います。
しかし、加害者の親は謝罪に来る事もなく、何事もなかったかのように、今も普通に生活をしています。今どういう気持ちで毎日を過ごしているのか。私達被害者遺族に対して真摯に向き合っているとは思えませんし、腹立たしい気持ちです。
加害者は事件以降、毎月謝罪の手紙を書き続けているらしく、その何通かを受け取り読みました。謝罪の言葉は書かれてはいましたが、何かお決まりの謝罪の言葉の羅列で、本当に反省しているのか分からないですし、何年も前から身近な周囲の人達に嘘をつき続け、何度も裏切ってきた人の言葉は信じられません。それに今更いくら謝罪を繰り返したところで虚しいものでした。
前科があり、執行猶予中で更生のチャンスがあったにも関わらず、それを生かす事もなく当たり前のように人を傷つけ、殺人という最悪な行為を犯しました。
あなたの身内が夢や希望を奪われ、弟と同じような惨い殺され方をしたらと、自分に置き換えて考えた事はないのですか。もしそうなったら、あなたはどういう感情になりますか。一度聞いてみたいです。
自分さえよければ、他人がどうなっても構わないという様な自己中心的な考え方、そういう生き方を続けてきた人間が、どれだけ謝罪の言葉を述べようが、どれだけ反省をしようが、全く心に響きませんし、何一つ同情出来ません。
後先も考えず、善悪の判断が出来ない身勝手な人間は、絶対に世の中に出て来てほしくはありません。人の自由を奪った人間に、自分の自由などあるはずがありません。 私は人の命を奪った者は、自らの命をもって償うべきだと思っていますし、命につり合うのは命だけです。そのような人間に社会復帰などありえませんし、絶対に許せません。
弟の人生は何だったのかと思います。弟自身もこんな形で人生を終えるとは思っていなかったはずですし、どんなに悔しかったことか。
加害者にさえ出会わなければ、こんな事にはならなかったのに。何度夢であってほしいと思ったことか分かりません。
もっと沢山いろんな事を話しておけば良かった、もっと思い出を作っておけば良かった、兄らしい事は何もしてあげられませんでした。弟の命を守れなかった、悩みに気づいてあげられなかった、今は後悔しかありません。
今も毎日のように全国で起こっている殺人事件。あまりにも人の命が軽く扱われている事が信じられないですし、このような辛い思いをする人が、少しでも無くなってほしいと願わずにはいられません。
事件以降、落ち込んでいる両親を見るのは辛いですし、先の見えない不安を抱える毎日ですが、事件をきっかけに沢山の方との出会いと励ましの言葉に支えられて、これまで何とか過ごす事が出来ています。
しかし、家族が殺されたという心に傷を負いながら、生きていかなければならず、二度と元の生活には戻れないのかと思うと、この苦しみや悲しみから一生解放される事はないでしょう。弟には生きていて欲しかった、もう一度会いたい、そう思う毎日です。
